人の身体の部分に頭、顔、手、足などの名称があるように、硯の各部分にもそれ
ぞれ独特の名称があります。
海(うみ)
磨った墨を溜めておくところ。他に、墨池(ぼくち)、硯沼(げんしょう)、水池
(すいち)と呼ばれることもあります。
丘(おか)
墨を磨るところ。墨堂(ぼくどう)、墨道(ぼくどう)、陸(りく)と呼ばれることもあります。
縁(ふち)
硯の周囲の盛り上がったところ。この縁の部分に彫りが刻まれたものもあります。
硯側(けんそく)
硯の側面。彫刻や文様がなされたものもあります。
硯面(けんめん)
硯の表面全体のこと。硯表(けんぴょう)と呼ばれることもあります。
硯陰(けんいん)
硯の裏面全体のこと。硯背(けんぱい)と呼ばれることもあります。
硯の使い方
墨を磨る
丘の部分に水滴を垂らし、墨を当て、丘全体を使うように前後又は「の」の字を書くように磨っていきます。
墨に適度な粘り気が出たら、磨った墨を海の部分に下ろし、再び丘に水滴を垂らして繰り返すことで良い墨色が出ます。
使用後
使い終わったら、きれいに洗い、自然乾燥させておきます。
洗うことを怠ると、硯の目が埋まってしまい、次に磨った時に良い色が出なくなります。
乾燥させたら、硯箱か布でまいて保存すると良いでしょう。
手入れ
良い墨色が出なくなってきたら、磨研石(まけんせき)と呼ばれる専用の砥石で目を立てます。水ペーパーなどのヤスリ類は、傷を取るには効果的ですが、目を丸めてしまうので目立ての役には立ちません。
目立ての際は、水を垂らし、ゆっくりと磨っていきます。一度に目を立てようとせず、少しずつ、5、6回に分けて行うと良いでしょう。
ただし、磨研石には種類があり、合わないものを使うとかえって硯を傷めることがありますので注意してください。特に文化財などの古硯の手入れは無闇に行わず専門家に頼んだ方が良いでしょう。